
クリニックの開業準備では、設備費や内装費、医療機器などの「開業に必要な資金」に目が向きがちです。
しかし、実際に開業した後の経営を安定させるためには、開業後に必要となる「運転資金」についても、しっかりと考えておく必要があります。
「患者さんが来る前提」で資金計画を組まない
開業前に事業計画を作る際、
「この地域ならこれくらいの患者さんが来るだろう」
「開業すれば徐々に患者数は増えていくだろう」
と、理想的な患者数を前提に計画を立ててしまうことがあります。
もちろん、開業後に順調に患者さんが増えていくことは理想です。
ただ、実際には開業直後から想定通りの患者数を確保できるとは限りません。
地域での認知が広がるまでに時間がかかったり、ホームページや広告の効果が出るまでに時間がかかったりすることもあります。
そのため、資金計画を立てる際には「予定より患者さんが少なかった場合」も想定しておくことが大切です。
患者数が少なくても、支払いは続きます
クリニックを経営していると、患者さんの来院数に関係なく発生する支出があります。
例えば、
・スタッフの人件費
・テナントの家賃
・医療材料費
・リース料
・システム関連費用
・借入金の返済
・広告宣伝費
などです。
患者数が想定より少なかったとしても、こうした支払いがなくなるわけではありません。
売上が十分に増えていない時期に固定的な支出が続けば、手元資金は少しずつ減っていきます。
だからこそ、開業前の段階で「どれくらいの期間、無理なく経営を続けられる資金を残しておくか」を考えておく必要があります。
運転資金は「最低3ヶ月、できれば6ヶ月」を目安に
運転資金については、最低でも3ヶ月分、できれば6ヶ月分程度を確保することを一つの目安として考えておくと安心です。
もちろん、必要な金額はクリニックによって異なります。
診療科、スタッフ数、家賃、医療機器のリース費用、借入金額などによって、毎月必要となる資金は大きく変わります。
そのため、「6ヶ月分あれば必ず大丈夫」という単純なものではありません。
重要なのは、自院の場合に毎月どれくらいの支出が発生するのかを把握し、患者数が想定を下回った場合でも経営を継続できるだけの余力を持っておくことです。
運転資金は「攻めるため」ではなく「焦らないため」のお金
運転資金というと、何か特別なことが起きたときのためのお金というイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、開業直後のクリニックにとって、運転資金は経営判断を焦らないための重要な余白でもあります。
例えば、患者数が思うように増えないとき。
手元資金に余裕がなければ、必要な広告を打つことや、スタッフ体制を見直すこと、設備やサービスを改善することにも慎重にならざるを得ません。
一方で、ある程度の資金的な余裕があれば、短期的な売上だけに振り回されず、状況を見ながら必要な対策を取ることができます。
つまり、運転資金は「何かあったときのため」だけではなく、開業後に落ち着いて経営するための資金ともいえます。
開業資金は「総額」だけで考えない
開業準備では、
「いくら借りられるか」
「開業にいくら必要か」
という視点だけでなく、
「開業後にいくら手元に残るのか」
まで考えることが重要です。
開業時に資金をすべて使い切ってしまうと、開業後の患者数が想定を下回った際に、経営の選択肢が狭くなってしまいます。
クリニックの開業は、開業日がゴールではありません。
むしろ、開業してから安定した経営をつくっていくことが本当のスタートです。
だからこそ、開業前の資金計画では「開業するためのお金」だけではなく、「開業後にクリニックを安定させるためのお金」まで含めて考えておくことが大切です。
運転資金に余裕を持たせることは、決して慎重になりすぎることではありません。
開業後に焦らず、必要な判断をするための準備なのです。